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映画界のタイトルデザイナーの第一人者「カイル・クーパー」による「Motion Plus Design」

今年(2018年)の6月に都内で開催されたモーションデザインのカンファレンス「Motion Plus Design 2018」で来日した映画界のタイトルデザイナーの第一人者「カイル・クーパー

モーションデザインのパイオニア的存在である彼が語った、モーションデザインのこれまでとこれから。

モーションデザインというのは、言ってみればタイポグラフィーなどのグラフィックデザインに動きを加えた物の事で、映画のタイトルやオープニングテロップなどの部分でよく見かけると思う。

以下記事抜粋

クリエイティビティや個性の先にあるデザインの哲学

彼の代表作である『Seven』のタイトルは、映画の不穏なストーリーや雰囲気をオーディエンスに共有させるため、文字が震える表現手法を使っている。同様のアイディアとして、『Final Destination 5』のガラスの上にテキストをステンシルで書いて砕いていく破壊的手法は、映画の作曲家ブライアン・タイラー(Brian Tyler)による強烈なメインテーマに呼応しながら、映画シリーズのディテールを投げかけ見る者の感情を共振させる。

クーパーは映画の何を見ているのだろうか?

Watch The Titlesのインタビューが興味深い。

どうして『seven』のオープニングがなぜこれほどまで影響力を与えているか聞かれたとき、彼は「本編の余白を埋めるものになっているからだろう」と話している。

たしかに、まだ『seven』を見ていない状態でこの映像だけを見ると、「サスペンスものだな」という印象こそ受けるものの、一体これらのモチーフが何を示しているのかを詳細まで理解することはできない。だが、このオープニング映像を本編を見た後にもう一度見返すと、ストーリーのヒントになる重要な要素が詰め込まれていることが鮮明に伝わってくる。

つまり『seven』本編を見たことがない状態と見終わってからとで、この映像がもたらす情報の解像度はまったく異なってくる。この「絶妙にネタバレにならないのに、見返すと重要なヒントになっている」というトリックは、デヴィッド・フィンチャーのもつ作品の雰囲気を大いにかきたてる魅力がある。

カイル・クーパーが作り出すモーション・グラフィックの魅力は、決して彼自身の「クリエイティビティ」や個性にあるわけではない。彼が本領を発揮している部分とは、映画を撮る監督がもたらす文脈やメッセージ性、色味や質感を完璧に咀嚼し、かつ本編のストーリーを最大限に引き立てるものづくりにあるのだ。

別のインタビューで、映画のオープニング映像の重要性について問われたとき、彼は「作り手にとって、観衆がより作品のリズムに入り込みやすくなるようにするため」と答えている。ここからも、彼がタイトルを作るうえで意識している対象が、受け手ではなく作り手に向いていることがわかる。

安心感は敵だ:デザインし続ける理由

パリを発祥とするカンファレンス「Motion Plus Design」は、モーションデザイン界の最前線で活躍するグラフィックデザイナーやタイトルデザイナーたちをスピーカーとして招き、彼らが経験や人生観を語り合う世界的なイベントだ。日本での開催は、2017年に引き続き今回が2回目となる。

「モーションデザイン」の活用は映画のみならず、Webサイトで滑らかに動くボタンや、「タッチしたかどうか」が動きでわかるようなスマホのUIもモーションデザインにあたる。ローディング時間に表示されるインジケーターは、私たちがもっとも見慣れている愛憎入り交じったモーションデザインのひとつともいえる。モーションデザインとは何かを端的に表した動画を紹介しよう。

グラフィックやタイポグラフィに命を宿す、モーションデザインの世界。その最先端では、常に挑戦と実践がプロミネンスのように起きている。Manijaが言い放った「安心感は敵」という言葉は、その飽くなき探求心を示しているように思えた。

「Motion Plus Design」のために来日したデザイナーたちは、プライベートを問わず、アイディアの表現を模索する生き方を歩んでいる。街を常に移動している人、家族を大事にしている人、過去のアーカイブにならう人など、自分自身にマッチする人生観をデザイナーという職業観と常に対峙させてきた。自分がもっともパフォーマンスを発揮できるような仕事との向き合い方を、常に探し続けているのだろう。その指向性こそが、充足した精神と豊かなクリエイティビティを醸成させるのかもしれない。

記事元
FUZE:タイトルデザイナー、カイル・クーパーが引き出した、クリエイティブの本質「Motion Plus Design」

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